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パーキンソン病はこわくない

若年性パーキンソン病に罹患した筆者が綴る悲喜交々

ATPを調整しパーキンソン病の進行を抑制、マウスで確認 

 【京都大学 2017.8.31掲載】

 垣塚彰 生命科学研究科教授らの研究グループは、生物の活動に不可欠なエネルギー放出/貯蔵分子であるATPのレベルを維持することによって、パーキンソン病(以下PD)のような神経変性疾患で影響される脳細胞を細胞死から保護することができると考え、ATP消費を制限する化合物と、ATP生成を増加する化合物の2種類を開発しました。これらの「ATP制御薬」をPDのマウスモデルに投与したところ、PDの症状が緩和されることがわかりました。今回の成果は、ATPレベルを調整することでPDのような治癒不可能な神経変性疾患を治療できる可能性があることを示す成果です。今後他の神経変性疾患の治療への活用も期待できます。

 本研究成果は、2017年7月24日にオープンアクセス誌「EBioMedicine」に掲載されました。

研究者からのコメント

 疾患の初期段階でのATPの減少は細胞や器官の機能を低下させ、さらにATPの減少が進むと、細胞死や臓器不全をもたらすことで症状が顕在化します。今後の治療戦略として、A​​TPレベルを調整し疾患の進行を抑制させることができるかもしれません。また、障害されていない細胞の機能を回復することで症状を緩和できる可能性もあります。今後研究が進むことで、多くの治癒不能な神経疾患へ治療の道が開くことが期待されます。

概要

 人間の脳は総体重のわずか2から3%程度の重さしかないのにもかかわらず、全血流の約15%を独占し、体を循環する酸素の約20%を消費しています。すなわち、脳は機能維持のために多くのエネルギー(ATP)を必要としています。脳や中枢神経系のATPの減少は神経細胞死をもたらし、虚血性または神経変性疾患を引き起こすことが知られています。例えばPDは2番目に頻度の高い神経変性疾患であり、約1,000人に1人が発症しますが、予防薬や治療薬がありません。PDは黒質のドーパミン作動性ニューロンの細胞死によって引き起こされますが、原因はミトコンドリアの機能不全とATP減少だと考えられています。加えて、PDの患者にはドーパミン作動性ニューロンにα-シヌクレインのタンパク質凝集体であるレビー小体の存在がみられることから、α-シヌクレイン凝集体の産生とATPの減少に何らかの関係があると考えられていました。

 本研究グループは、まず細胞内のATP消費を減らすことができるKUS(Kyoto University Substances)剤を開発しました。 以前の研究で、KUS剤は網膜色素変性、緑内障、虚血性網膜疾患での網膜神経の細胞死を防止できることをマウスの生体内で確認しています。今回、クマリン由来の天然化合物であるエスクレチンが、脂肪の燃焼やミトコンドリアの産生に関わる因子であるERR(エストロゲン受容体関連受容体)のアゴニスト(作動薬)として機能し、ATP産生を増やし細胞内のATPレベルを上昇させることを発見しました。

 そして2種類のPDマウスモデルを使い、生体内でもKUS剤とエスクレチンがPDでの神経細胞死に対して保護効果をもつことを示しました。治療を受けたPDマウスモデルの神経細胞は、α-シヌクレインとCHOP(プログラムされた細胞死である、アポトーシスを誘導する転写因子)の発現レベルが修正され、ATPレベルも平常に戻りました。これらの結果から、α-シヌクレインの発現とATPレベルの低下は強い関連性があることや、レビー小体の存在は、かつてATPレベルの低下が生じていた状態があったことを示すマーカーとなりえることが示唆されました。

category: 【報道・記事】

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