パーキンソン病論文抄読共有サイト

月: 2021年9月

DAT SPECT正常のパーキンソン病患者(SWEDD)

123I-ioflupane (DaTSCAN®) SPECTなどによるdopamine transporter (DAT)の検出は、線条体のpresynaptic axon終末におけるDATを検出することで黒質-線条体路の神経変性の程度を描出するため、パーキンソン病の診断補助として広く用いられている[1]。パーキンソン症状が認められた場合、DAT SPECTで線条体における信号低下が認められれば、特発性パーキンソン病の他、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症などが鑑別にあがる。一方、信号低下がない例では、心因性、薬剤性/脳血管性のパーキンソニズムやジストニアなどの可能性も考えなければならない[1,2]。... 続きを読む

パーキンソン病と視力障害

パーキンソン病は寡動、振戦、固縮などの運動症状が主症状であることは有名であるが、自律神経や認知機能低下などの非運動症状もしばしば見られる。これらの非運動症状は運動症状に先行することもあり、早期から非運動症状を合併した場合には運動症状の進行が速いとする報告もある[1]。視力障害も非運動症状の一つであるが、パーキンソン病の進行との関係ははっきりしていなかった。しかし近年、韓国の全国調査では、視力障害を認める患者はパーキンソン病進行と関連し、運動症状の進行以前にみられる病状の一つである可能性が示唆された[2]。さらに、パーキンソン病患者では網膜の菲薄化、網膜神経線維層の進行性変化が見られるといった報告もある[3-5]。しかし、パーキンソン病は慢性経過で進行を呈する疾患であるため、長期的な観察が必要で、これまでの研究は不十分な観察期間であった可能性がある。視力低下は認知機能の低下とも関連しており[6]、様々な因子が複合的にパーキンソン病の進行に関わっている可能性を考慮しておく必要がある。... 続きを読む

パーキンソン病患者の局所場電位(LFP)の活用

病態生理学的研究は、臨床データと神経生理学的データとの相関関係を元に、根底にある病態のメカニズムを明らかにすることを目的としている。パーキンソン病に関連する研究においては、脳深部刺激療法(DBS)の作用機序の調査がその一例である。具体的にはパーキンソン病における大脳基底核の運動および非運動機能データと、局所場電位(LFP: local field potential)として知られる深部脳波信号を記録/分析することで、DBSの作用機序に関する洞察を得た研究がある[1]。このような研究においては、生体信号等の研究データを安全な環境で収集/共有することが重要である。... 続きを読む

COVID-19後遺症としてのパーキンソニズム

COVID-19による長期的な後遺症は現状不明であるが、約半年の追跡からの報告によると、倦怠感や筋力低下が6割ほど、睡眠障害が3割ほどの罹患患者で認められるようである。また不安やうつを感じることも23%と比較的多いことが分かってきた [1]。... 続きを読む

iPS細胞を用いたパーキンソン病治療

現在の主流なパーキンソン病治療に、内科的な薬物療法やリハビリテーション、外科的には脳内電極を埋め込む脳深部刺激療法がある。これらの治療の進歩により、パーキンソン症状を長期間ある程度コントロールすることが可能となっている。しかし、どの方法も残存神経細胞の働きを制御するアプローチであり、黒質のドパミン神経細胞の減少を止めることで病気の進行を止めるなど、病気を根本的に治すことはできない。完全な根本治療は未だ困難であるが、これに類似のアプローチとして、1980年代から胎児由来のドパミン神経細胞の脳線条体への移植による治療研究が行われてきた[1-3]。 すべての患者に対して効果があるわけではないが、適応を選べば効果が持続することが確認されている。しかし、胎児由来の細胞を扱うという倫理的な問題や、1人の患者に対して複数の胎児ドナーが必要という量的な問題などがあり、標準治療としては難点が山積していた。さらに、移植した後のドパミン生産過剰によるジスキネジアも報告された[4]。... 続きを読む

パーキンソン病患者のリアルワールドデータをスマートフォンでモニタリング評価できるか?

リアルワールドデータとは医療ビッグデータを指し、臨床現場で得られる診療行為に基づく情報を集めたものである。これは、疾患理解の促進や医療の質の向上を含め、患者の状況を改善するために有益な情報となる。現在、パーキンソン病患者においてもリアルワールドデータを収集する試みがなされており、リモートモニタリングでのデータ収集方法としてスマートフォンを用いた方法が注目されている。... 続きを読む